体外受精 In vitro fertilization

実験に用いられる多くの動物種においては、 体外に取り出した未受精卵子と精子を一緒に培養することで受精を促すことが出来ます。 実際の手順としては、まず多くの卵子を採取するために、 雌動物へホルモン投与をして過排卵誘起を行います。 そして得られた卵子を適切な条件下で精子と共に体外で培養をして受精させます。

通常は受精卵(胚)を培養により更に発育させてから、偽妊娠状態もしくは胚を受容できる受胚動物の卵管、 子宮などの中へ移植することにより、体外受精由来の子供を得ることになります。 体外受精は、稀少であったり、不妊もしくは子供を取ることが困難な系統動物や動物種の救済に役立つと共に、 科学的見地からも受精機構を調べる上で必要な技術となります。 また、卵子および精子の凍結保存による各動物種および系統動物の維持のためにもこれらの技術は必要です。

実験動物ではマウスを対象とした体外受精が最も頻繁に実験に利用されており、計画的に多量 の受精卵を必要とする場合に有用です。 我々の実験室では、マウスの55系統にわたる体外受精の成績(Ref.1)を報告していますが、 その中には受精率の低い系統や培養条件の検討が必要な系統があります。 ウサギ(1959年)やラット(1974年)では体外受精由来の産仔が得られているものの、 その他の動物種ではなかなか再現性のある結果が得られていないのが現状です。 我々のグループはマストミス(Ref.2)およびスナネズミ(Ref.3)について体外受精の成績を報告していますが、 未だ産仔は得られていません。 また、モルモットについても体外受精由来の産仔は得られていませんし、 シリアンハムスターでは産仔獲得の報告例(1991年)の再現は困難なようです。

このように周辺技術を含めた体外受精の各条件の検討は、更に発展させる必要があり、 ひいては生物の発生の機序を探るうえで重要な情報を提供してくれることでしょう。

参考文献

  1. Development in vitro of preimplantation embryos from 55 mouse strains., Suzuki O., Asano T., Yamamoto Y., Takano K. and Koura M., Reproduction, Fertility and Development, 8, 975-980 (1996).
  2. Partial characterization of the gametes and development of a successful in vitro fertilization procedure in the Mastomys ( Praomys coucha ): A new species for reproductive biology research., Nohara M., Hirayama T., Ogura A., Hiroi M and Araki Y., Biology of Reproduction, 58, 226-233 (1998).
  3. 3. In vitro fertilization and intracytoplasmic sperm injection in the Mongolian gerbil., Mochida K., Matsuda J., Ponce R. H., Nakahira M., Takano K., Yamamoto Y., Noguchi Y. and Ogura A., 14th International Congress on Animal Reproduction, Abstracts vol.2, 204 (2000)