医薬基盤・健康・栄養研 実験動物研究資源バンク事業の概要

事業紹介2015年4月

医薬品の開発や疾患研究には,種々の疾患モデル動物が使用されており,その開発,系統維持,供給は我が国の医学,医薬品等開発研究の基盤として必須であり,長期的安定的な基盤整備が重要です。そこで,疾患モデル小動物研究室(前実験動物開発研究室)では,新たな疾患モデル動物の開発と病態解析,および発生工学など関連技術の開発を行うとともに,とくに厚生労働省傘下の国立研究機関,ナショナルセンターなどとの連携を深め,創薬研究や疾患研究に役立つ疾患モデルマウスを中心にして,その積極的な収集,保存,確実な系統維持,安定した供給及び関連情報の発信などのバンク事業を行っています。とくにヒトの病態モデルとして重要な自然発症疾患モデルマウスや,治療法の開発研究に不可欠の難病モデル動物の収集,提供などを進めています。

幸い,資源寄託者や利用者のご協力も大きな力となり,私たちのバンク事業を発展させることができ,発足当初(2006年11月)の公開系統数は19系統でしたが,約8年半(2015年3月現在)で200系統以上を公開・利用可能とし,300件を超える分譲(発足からの累積件数)を実施しており,さらに保護預かり・サポートサービスの利用件数(累積)は約3600件に達しています。

事業内容は,次の通りです。医学・創薬に真に役立ち,研究者にとって利用しやすいように,安定した技術と迅速できめ細かなサービスに努めますので,是非ご利用下さい。(*価格表をご参照下さい)

  1. 疾患モデルなどの有用マウス資源の収集(資源の寄託に関する費用は無料です)
  2. マウス系統の有償分譲*
  3. 凍結胚・凍結精子の保護預かりサービス(マウス系統の情報は非公開で資源を保管するサービス)*
  4. 保護預かりのためのサポートサービス(凍結胚・凍結精子作製および保護預かり資源からの生体作出サービス)*

沿革

以下に,私ども疾患モデル小動物研究室の前身である国立予防衛生研究所および国立感染症研究所の実験動物関連の沿革を【資料】として示します。

当研究室はご覧のように,日本における実験動物学の草創期から60年以上の歴史をもち,先輩たちはSPF動物の普及における実験動物の微生物学的統御や,生物学的製剤などの検定に利用される系統動物(ddYなど)の作出など実験動物の品質向上に大きく寄与してきました。また,世界的にも貴重な近交系モルモットを樹立してきました。さらに自然発症の疾患モデル動物の開発(ELてんかんモデルマウス,MPSマイコプラズマ易感染マウス,ICGNネフローゼモデルマウスなど)も長年に亘って行ってきました。最近は,特に発生工学を駆使して難病などの疾患モデル動物(ライソゾーム病モデルマウス,拡張型心筋症モデルマウスなど)を開発し,さらには貴重な系統の胚・精子などの凍結保存も行っています。

さて,(独)医薬基盤研究所(現医薬基盤・健康・栄養研究所)は,厚生労働省所管の研究所では初めての研究開発・支援型の研究機関であり,創薬支援に特化した研究所として,2005年に発足しました。研究所の目的として,試験研究用生物資源の研究開発等が1つの柱となり,それにより医薬品及び医療機器等の開発のための基盤の整備を図り,もって国民保健の向上に資することを目指すと謳われています。このように従来は厚生労働省傘下の各組織に分かれていた生物資源5部門,すなわち,国立医薬品食品衛生研究所に属していた細胞バンク,薬用植物及び,国立感染症研究所に属していた遺伝子バンク,霊長類,そして私たちの実験小動物が一つの研究所に統合されたことになり,医学・創薬を支える生物資源センターとしての発展が期待されています。また,2015年4月には,(独)医薬基盤研究所は(独)国立健康・栄養研究所と統合され,国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と改称されました。医薬・創薬とともに健康・栄養をも含む国民の健康長寿社会への貢献が期待されています。私たち疾患モデル小動物研究室もその一翼を担うべく日々努力を重ねておりますので,ご支援ご鞭撻のほど宜しく御願いします。

国立予防衛生研究所・国立感染症研究所・医薬基盤・健康・栄養研究所-実験動物関連の沿革-【資料】