難病マウスモデルライブラリ

ゲノム編集技術を用いて難病関連遺伝子のノックアウト(KO)マウスを網羅的に作成する事業で,2018年度より着手した。 関連して,難病関連の研究ツールとして使えるマウスの作成も行っている。 それらマウスは,資源化(凍結胚や凍結精子の作成と品質評価)が完了次第,順次,実験動物研究資源バンクを通じて分譲する(系統名にリンクがあるものは分譲可)。

この事業についてのご質問・ご意見等についてはこちらまでご連絡下さい

ヘルマンスキー・パドラック症候群

指定難病164の眼皮膚白皮症の病型の一つ,ヘルマンスキー・パドラック症候群(Hermansky-Pudlak syndrome,HPS)の原因遺伝子9つについてKOマウスを作成した。 原因遺伝子の中には消化管異常(指定難病96のCrohn病に類似)や間質性肺炎に関与するものも含まれており,HPSだけでなく多彩な疾患の症状モデルとしての活用も期待される。

遺伝子名 系統名 被毛の様子
Hps1 Hps1-KO
Ap3B1 (Hps2) p3B1-KO
Hps3 Hps3-KO
Hps4 Hps4-KO
Hps5 Hps5-KO
Hps6 Hps6-KO
Dtnbp1 Dtnbp1-KO
Bloc1s3 Bloc1s3-KO
Bloc1s6 Bloc1s6-KO
Wild-type(参考) C57BL/6N

アルポート症候群

慢性腎炎,難聴,眼合併症を呈するアルポート症候群(指定難病218,Alport syndrome)の原因遺伝子の1つ,Col4a4のKOマウス(Col4a4-KO)を作出した。

特発性肺線維症

Jackson研究所が提供している肺線維症の関連遺伝子情報(http://www.informatics.jax.org/mp/annotations/MP:0006050)をもとに,特発性間質性肺炎(指定難病85)の一種,特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)に関連する遺伝子のノックアウトマウスを作成した。

遺伝子名KO マウス補足
Cav1Cav1-KO
CftrCftr-KO
Cox4i2Cox4i2-KO
CtskCstk-KO
Cxcr3Cxcr3-KO致死のためライン化できず
Cysltr2Cyltr2-KO
HckHck-KO
Itga3Itga3-KO
Sftpa1Sftpa1-KO
SftpcSftpc-KO
SftpdSftpd-KO
Tnfrfs1aTnfrfs1a-KO
Tnfrfs1bTnfrfs1b-KO
Tomm5Tomm5 KO
Trp53Trp53-KO
Twsg1Twsg1-KO致死のためライン化できず
Wwtr1Wwtr1-KO致死のためライン化できず

神経筋疾患関連

カナバン病(指定難病307)

カナバン病の原因遺伝子である Aspa遺伝子のノックアウトマウス(Aspa-KO)を作成した。

進行性白質脳症(指定難病308)

進行性白質脳症の原因遺伝子のうち,Eif2b1遺伝子のノックアウトマウス(Eif2b1-KO及び,Mlc1遺伝子のノックアウトマウス(Mlc1-KO)を作成した。さらに,他の原因遺伝子(Eif2b3, Eif2b4, Eif2b5)のノックアウトマウス(, Eif2b3-KO, Eif2b4-KO, Eif2b5-KO)も作成し,現在資源化中である。 Eif2b2遺伝子およびAars2遺伝子についてはfloxマウスを作成中である。

難病研究用ツールとして利用可能なマウス

Hairless 4C30マウス

拡張型心筋症モデルの4C30マウスのヘアレス遺伝子をノックアウトすることにより,無毛化したマウス(Hairless 4C30)を作成した。

Mup-KOマウス

マウスでは肝臓で作られるMajor urinary protein(MUP)が大量に尿に排泄されるため健常でも蛋白尿である。しかし,ヒトには当該遺伝子は発現していない。そこで,Mup遺伝子群をゲノム編集(CRISPR/Cas9)によりノックアウトしたマウス(Mup-KO)を作成した。

新型コロナ感染症の研究用ツールとして利用可能なマウス

Ace2-KOマウス

マウスの内因性Ace2遺伝子をノックアウトしたマウス(Ace2-KO)を作成した。ヒトAce2-Tgマウス(Ace2-Tg#5,Ace2-Tg#16,Ace2-Tg#17)との交雑でAce2分子が完全にヒト型となったマウスを作ることが出来る。

Dpp4-KOマウス

マウスの内因性Dpp4遺伝子をノックアウトしたマウス(Dpp4-KO)を作成した。現在資源化中である。将来的にヒトDpp4-Tgマウスとの交雑でDpp4分子を完全にヒト型となったマウスを作る際に有用である。

細胞性免疫に関する研究用ツールとして利用可能なマウス

細胞性免疫の解析ツールとしてFc受容体のノックアウトマウスを作成した。

Fcgr1-KO

Fcgr1遺伝子をノックアウトしたマウス(Fcgr1-KO)を作成した。

Fcgr2,3,4-triple KO

1番染色体にFcgr2b(リバース), Fcgr4(フォワード), Fcgr3(リバース)の順で3つの遺伝子が並んで存在するので,Fcgr2bの3'-UTRとFcgr3の5'-UTRの間をゲノム編集で欠失させることにより同時に3つの遺伝子がノックアウトされたマウスを作成した。Fcgr234-KOをご参照下さい。

Fcer1g-KO

Fcer1g遺伝子をノックアウトしたマウス(Fcer1g-KO)を作成した(現在資源化中)。

参考文献

  1. Suzuki O, Koura M, Uchio-Yamada K, and Sasaki M. (2021) Urinary protein analysis in mice lacking major urinary proteins. Exp Anim 70(3):406-411. [PMID:33883349]